本当に効果的なOJT

20代後半から30代前半にかけて、採用担当をした。インターネットのない時代だから深夜まで学生に勧誘の電話をすることも多かったが、職務の一つとして、全国の高専の就職担当教授に求人依頼に行くことがあった。出張後に面会記録を定型の報告書(当時は手書きである)で上司に報告することになっていたが、読書はしない、漢字を知らないにもかかわらず、仕事はできると己惚れ、「割腹の良い先生に面会・・・」といった類の報告書を書いていた。報告書は、主任⇒人事課長⇒人事部長まで回覧され、人事部長から赤字で「恰幅の良い・・・」と数か所の添削をされたものが戻された。 

口頭で注意を受けたわけではなく、ただ単に書類が戻されてきただけだったが、この時ほど自分の無知と傲慢さを思い知らされ、顔から火が出るほど恥ずかしかったことはない。それからというもの、あやふやな漢字については辞書を引いてから書く習慣となった(PCソフトでの自動変換機能がない時代の話である)。そして、文章を書くことが徐々に好きになり、30年後に本を上梓するところまでたどり着いた。
 

30数年の会社生活では、幾多のOFF-JTの研修プログラムや他の上司・先輩からのOJTも受けたが、このときほど本当の意味での教育をしてもらったと感じたことはない。

 

教育・研修効果は、そこにかける金や時間に必ずしも比例しない。ほんの一瞬のアドバイスでも、たったひとつの「赤ペン先生」でも、その後の人生を変えるほどの影響を相手に与えられることがある。高額な費用を投じて行うOFF-JTより、先輩や上司による日々のさりげないOJTこそが、ビジネスパーソンを成長させる契機になると筆者は信じている。