いい加減な採用エージェント

採用に関わる仕事を長年しており、また自身も求職活動をすることがあることから、多くの人材紹介エージェントと付き合ってきた。

素晴らしいエージェント(コンサルタント)はもちろんいる。求人側企業の人材ニーズをきちんと掘り下げて把握し、求職者のニーズや適性とうまくマッチングさせるように手間暇かけて双方とコミュニケーションを取る努力を怠らない。こういったコンサルタントに巡り合えれば、会社にとっても求職者にとっても良い結果に結びつくだろう。


一般に、求人企業はわがままなものである。エージェントに要求すれば、自分たちの希望する人材がベルトコンベアーに乗ってやってくると思っている。だが、肝心のどんな人材が欲しいのかを突き詰めて考える前に依頼してしまいがちである。急な退職による欠員状態を一刻も早く埋めたいとか、現職者のパフォーマンスに不満があるからさっさと代えたいとかといった欲求が冷静な振り返りを妨げてしまう。

あるエージェントの紹介で面接をしたことがある。
最初の面談は、代表取締役社長で実質的なオーナーだった。良い雰囲気でコミュニケーションが進んだので、後は、条件確認のための面接を他の役員とするだけのステップと思っていたが、その後、同じ役員を含め延べ4人と面接を重ね、結局は縁がないことになった。
エージェントに腹立たしく感じたのは、次の面接を事務的にアレンジするだけで、面接の趣旨や、採用プロセス全体の中でどういう位置づけにあるのかの説明が全くなく、こちらが問いただすと初めて、求人側に最低限の内容を確認するという状況。「お前はロボットか?!」と言いたくもなったが、趣旨のはっきりしない面接を重ねているうちに、こちらのモチベーションも萎えていった。


ある役員と面接をしていると、「社長は〇〇の考え方ですが、私は●●で・・・」という発言があり、要するに、会社として、このポジションでどのような仕事をしてほしいのかという基本線すら定まっていないということが露呈した。会社だから、人によって見解が違うことは当然あるだろうが、それでも一応、整理くらいはしておいてほしい・・・これもできずに、「とりあえず人を採れば何とかなるだろう」と思っているのでは、多分、うまくいかない。


エージェントの立場では言いにくいかもしれないが、いい加減な求人先には、「もっと、ポジションのJD(Job Description)を明確にするように」と苦言を呈することも必要である。