新「会社人間」主義ー何故、働くのか

「価値のあることをしようとするなら、何事によらずそれを達成するためにすべてを注ぎ込まなくてはならない。それができないのならやめたほうがいいということだ・・・・・程度の差はあれ、それまでの努力の限界を超えたときには、間違いなく目覚ましい進歩が見られるはずだ。そうした極限の努力は、私達をより高い機能レベルに引き上げるとともに、強力な学習経験として残る。心理学者のウィリアム・ジェームズのいう「隠された力」に近づけてくれるのだ。

生き物は、動かずにいられないように生まれついている。どのレベルの生物にとっても動かないことは死を意味する。前進しなければ後退するしかない。生き残っていくのは進歩し続けているものだ・・・・・人が他の生物と違うのは、意志があるという点だ。人が最高のものを生み出せるのは、未来に向かって自らの正当な能力を傾注したとき、つまり目標を目指しているときなのだ。身体的にも、精神的にも進歩したいと望む人は、自らの意志で努力を継続しなければならない。」
 
マイク・メンツァー(元Mr.ユニバース)
マッスル&フィットネス誌('96年5月号)より

ボディビルディングは、極めて個人的かつストイックなスポーツであり、極限までの力(筋力)を出し切って体を成長させていくものだ。一般には、最大筋力の60%以上の力を出すと筋肉は成長すると言われる。
 ベンチプレスを数年来やっているが、110kgまで来たらパタリと伸びなくなってしまった。伸ばす方法は、頭では分かっている。栄養をとって今よりも大きな負荷を試していくことだ。しかし、十分に気をつけないと体を痛めることもあるし、仕事で疲れた後にそこまでやりたくないなどと後ろ向きに考えるとやはり挙がらない。最大挙上重量を維持するだけでも大変だ。1ヶ月もトレーニングをやらなければあっという間に筋力は衰えてしまうのである。

 これは、知的労働にも通じる部分があると信じている。明日も今日程度でいいやと思って仕事をしていると、成長しないどころか、気が付かない間に退歩の坂道を転がり始めているのである。価値あることを成し遂げる為に努力を傾注し、進歩しようと心がけることが重要であり、働く動機は、進歩したいと願う心の中にある

さて、我々は日頃、自分の最大能力の何パーセントを仕事で発揮しているだろうか。会社生活では、個人技だけでなくチームプレーも多く、また100%常に出し切っていたら定年前に燃焼しきってしまうので限度はあると思うが、それにしても、日本のサラリーマンの多くはまだまだ能力の出し惜しみをしているのではないだろうか。これは、個人の問題であると同時に、年功序列制度の問題でもある。

自らを完全燃焼させて良い仕事をしても、その時にそれと分かる報酬を十分に与えられないという経験を幾度かしていると、徐々に力の出し惜しみをするようになっていく。ロングランで貢献と報酬のバランスを取ろうとする年功序列制度の下では、自らの内部に強い向上意欲を持ち続けていかないと、手抜きと惰性の生活になりがちである。

新「会社人間」主義ー私の考える「ホワイトカラー」-(1999年1月)より

イラスト作成:漫画家「霧」、無断転載厳禁

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