新「会社人間」主義ーパイ

 1955年から1994年の40年間で、名目GDPは8.6兆円から478.8兆円となり56倍に成長した。実質では約10倍となり、年平均で6%の成長を続けてきたことになる。同じ間に、大学卒初任給は1万円から19万円となり約20倍に達している。
 しかし、1997年は実質GDPでマイナス0.4%成長、98年はマイナス2%程度の成長と予想されており、日本経済は深刻な停滞期に入っている。

 パイが小さくなったのだ。高度成長を続けていた60年代から70年代の頃は、皆にほぼ平等に分けても、揃って豊かになっていったから、あまり文句は出なかった。西欧諸国が先鞭をつけた分野の後追いの仕事がメインでもあり、仲間と心を合わせて頑張っていくという気持ちが重要だった。だから、隣の人間の財布の中身がある程度分かる年功序列制の方が、お互い気持ち良く仕事ができたのだ。
 
 残念なことに、パイは大きくならなくなった。それどころか、小さくなってきた分野が多い。そこで初めて、誰に大きな分け前をあげるべきかを真剣に考える必要が出てきた。小さなパイを働きに関係なく平等に分け与えたら、これはもう共産主義以外の何物でもなく、個人のモラールを刺激することはできない。
 今、経営者が焦って標榜している「成果主義」の背景とはこういうことである。
イメージ 1
(新「会社人間」主義ー私の考えるホワイトカラー」- 1999年1月 より)

これを書いてから20年近く経過したが、事態はあまり変わっていないようである。
報酬制度に、正しいとか間違っているとかというものはない。ときの経済や社会の潮流の中で「これなら仕方ない」と従業員に思わせる「納得性」をいかに確保するかが鍵となる。アメリカでは、「ノーレイティング」がブームの一つになりつつあるようであるが、これとても唯一の正しい解というわけではなかろう。

(ここに記載した文章と図表は全て筆者のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を固く禁じます。)