外資で働く(15)-転職と年収

転職する際に優先すべき検討ポイントは、年収、仕事(職種)、職場環境、社風等色々あるが、人により、またそのときの状況により優先順位は違ってくるだろう。
しかし、生活の基盤となる報酬水準は常に重要な判断要素になると思っていた。

わけても外資系で転職を繰り返す人には自信家が多いので、年収が下がってでも転職する人はあまりいないだろうと思っていた。が、採用面接をしていると、年収が下がっても転職したいという人にお目にかかることがある。中には、百万円以上あるいは2割以上下がっても転職したいという人がいる。聞けば、在職中の会社(職場)は個人主義が強すぎてチームワークがなく虚しさを感じたとか、自分の意見が海外本社に全く聞き入れられず遣り甲斐を感じられないといったような理由である。

「処遇については御社の規定に従います」と白紙委任をしてくるケースもある。極端な加重労働や、ぎすぎすした人間関係、風通しの悪い社風等、切羽詰まった理由があるのであろうが、共通して言えるのは、一刻も早く今の環境から逃げ出したいと思っていることである。

年収が下がるのを覚悟で応募してくるもう一つの理由もある。それは、実力以上に高い報酬をもらい背伸びをしていることに本人も気づいていて、分相応の年収で落ち着いて仕事をしたいと願うケースである。外資系では、同じような実力と思われる人材の年収に倍半分の開きがある例に出くわすが、実力以上の高額の報酬をもらっているとリストラの対象にもなりやすいので、このことに気づける人は長い目で見れば幸いともいえる。

伝統的な日本の大企業の年功的な賃金制度が必ずしも良いとは思わないが、外資系の賃金相場にはばらつきがあり、これまた問題である。一旦実力以上の報酬をもらうと自らの実力を勘違いしかねず、後々苦労することにもなりかねない。

もう少し実力や経験に見合った秩序ある賃金相場が形成されることを願うこの頃である。

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