外資で働く(16)-やりきった感

外資で採用面接をしていると、応募者から転職理由として「やりきった感」という説明を受けることがしばしばある。

外資系の間で頻繁に転職を繰り返す人は、ひとつの会社に4~5年いると、別の会社に転職したくなるようだ。「今の会社(職場、例えば営業)ではやれることをやりきった感があるので、新たなチャレンジをするために御社を志望しました・・・」というような説明をする。

日本の会社で四半世紀を過ごして外資に転じた身からすると、5年くらいで「やりきった感」が持てるとの説明を額面通りに受ける気にはなれない。短期間で完全燃焼した例もあるだろうが、表面的に仕事をなぞっただけで一人前になったと誤解している場合もあるだろう。今の会社ではこれ以上偉くなれそうもないことを、このような言い方で表現していることもあるだろう。外資系の多くは中小企業であるゆえに、長期にわたるローテーション・人事異動を通じた育成・昇進のシステムが確立していないため、同じ職場で同じ職種をずうっと続けるか、社外に転じて上のポジションを狙うしかないという面もあるものと思われる。

その程度の「やりきった感」しか与えられずに有為の人材を失うとしたら、外資系企業にとっても不幸であり、伝統的な日本企業のローテーションシステム等を参考にじっくりと人を育てる工夫も必要だと思う。

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