外資で働く(24)-人材開発プログラム

外資系企業においても、人材開発の重要性は日本の伝統的企業と変わらな
い。ただし、外資系に共通する特徴がある。
 
第一に、人材開発のグローバル共通の方針は、グローバル本社で決めら
れる。ただし、グローバル本社で関心があるのはサクセッションプラ
ン(後継者育成計画)を念頭に置いた幹部クラスの社員であり、それ以外
社員教育のやり方はある程度ローカルの裁量に任されていると言って
よいだろう。
 
第二に、グローバル主催の幹部育成プログラムは、英語が前提となり、
英語のできない者への門戸は閉ざされていることである。

医療機器メーカーの例を挙げるが、営業とサービスエンジニアを対象に、
グローバル共通の製品トレーニンの体系が整備され、原則としてこの研
修を終了しないと顧客対応をしてはいけないことになっていた。トレーニ
ングは全て英語で4階に分かれ、第1段階はE-ラーニングでできるが、
第2段階以降は海外出張による研修となる。最終段階まで終了すると「マ
スター」の称号を与えられ、勤務国内の従業員に対するトレーニング講師
としての資格が与えられる。英語ができないと最終段階までは行けない
が、研修の仕組みとしてはしっかりできており、さすがはグローバル企業
との印象を持った。
 
第三に、中途採用主体の人員構成の制約とも言えるが、個々の従業員の持
つビジネス常識や価値観にばらつきがあり、人材の品質という点での保障
がしにくいということが挙げられる。
専門スキルは過去の経歴を見ればある程度推測できるが、いわゆる「人
間力」やマネジメント能力がどの程度あるのかは使ってみないと分からな
いというのが正直なところである。優秀だと思って幹部で採用してみた
ら、ピープルマネジメントができずに組織を壊しかけた例もある。
従って、研修メニューとしては、専門スキルよりも、ヒューマンスキルに
関わるものの重要性が高く、また実施効果も高いと感じている。例えば、
EQアセスメント、360フィードバック、エグゼクティブコーチング、
チームビルディングなどである。
 
もっと基礎的なものとして「管理の基礎」のようなメニューも大事だと
思う。従業員が他社でどのような教育訓練を受けて今に至ったのかは会社
には未知の世界であり、「(マネージャーだから)これくらいはわかって
いるだろう」と思いこまずに地道に教育していくことが肝要である。
 
外資系企業での人材開発プログラムの例を参考に掲げる。
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