外資で働く(25)-貢献のBreakeven Point

外資系企業に転職したとして、最初の3ヶ月程度でどれくらいキャッチアップできるかが、その会社で生き抜いて行けるかどうかの分かれ目になる。

2005年、ニューオリンズで開催されたSHRMで、ハーバード大学教授のMichael Watkinsのセミナーを受け、彼の著書"The First 90 Days"を買った。新しい会社や組織に移って最初の90日でいかにして立ち上がっていくかに関するスキルを述べたものである(2013年には改訂版も出され世界のベストセラーになっているようである)。

この本(初版)によれば、外部から採用された幹部の40%から50%は期待される成果を出していないという。
会社に対する貢献の損益分岐点は、入社6.2ヶ月後になるという。最初の3ヶ月は組織や人の状況を把握する為に費やされる学習期間で、その後の3ヶ月間に徐々に仕事ができるようになり投資と貢献の帳尻が合うまでに半年かかってしまうということである。

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この点で中途入社(採用)は、会社にとっても、本人にとってもリスクになることに留意しておく必要がある。

会社にとっては、採用エージェントに予定年収の30%以上ものFeeを払って確保した社員の入社後半年間の報酬は貢献には結びつかないことになり、合わせて年収の80%分が直接投資となる。周囲の人によるOJTを通じた教育やサポートの労力等も含めれば優に年収1年分以上の投資が必要になるということである。
これだけの投資をしても本人がスムーズに立ち上がらなかった場合には、投入された資金と労力は無駄になり、社内外から代わりの人材を調達するサイクルを繰り返す悪循環に陥る。

本人は、半年経っても1人前になれなかった場合、会社から厳しい視線を向けられることを覚悟しなければならない。伝統的な日本の大企業なら新規学卒中心に人材確保をしているため、中途採用者についても、ある程度は長い目での立ち上がりを見守ってくれる可能性があるが、社員の大半を中途採用で確保している外資系に、そんな悠長なことは期待しにくい。即戦力としての会社の期待に応えられない場合には、降格や退出勧告のリスクを負うことになる。

私自身、今の会社に転職した当初は、"First 90 Days”を読んで一日も早い立ち上がりに努めたのだが、何をしたのか分からないうち3ヶ月が経った記憶しかない。ようやく会社の雰囲気や流儀に慣れたのは1年以上経ってからだったと思う。忍耐強く見守ってくれた会社幹部や職場の人達に感謝の気持ちである。

(上記の文章は全て筆者のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を固く禁じます)