外資で働く(30)-Grand Parent Principle

外資系企業に入社して気づいたのは、処遇制度の基本的な考え方は日本企業とそれほど変わらないということだった。日本で事業を行い、優秀な日本人を惹きつける為には、退職金のような長期的インセンティブが必要だし、短期的成果に報いるボーナスも必要だからどちらの仕組みも整えている。数値目標を主体とするボーナス等の評価プロセスは日本企業より公平で透明性が高いという長所もある。ある外資系企業の処遇制度の特徴を以下の図に示す。


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外資系だから、成果だけで評価するというわけではなく、会社の掲げるバリューに沿った行動によって成果を出したのかというプロセスも評価の対象にする。バリューの項目の一つに"Collaboration(協力)"があるとした場合、周囲と全く協力せずワンマンプレイで成果を出したとしても評価はされない。成果のみを強調しすぎると組織効率を無視した個人プレーに走りがちになるので、バリューによる評価を入れることで牽制とバランスをとることができる。

もう一つの特徴として、筆者が勤める会社には、"Grand Parent Principle"というものがある。部下の評価を直属上長だけで決めずに、上位上長の評価(同意)によって最終決定するという原則である。日本の伝統的大企業のように全てのプロセスを合議で決める企業文化では、部下の人事異動や評価についても複数上長が関与するのは当たり前であるが、外資系においてこの原則が導入されていることには大きな意味がある。

人材流動性が激しく、上長との組み合せも頻繁に替わることが多い外資系企業で、直属上長に全ての決裁権を与えてしまうと、Favoritism(依怙贔屓)や短期的視点のみの偏った評価になるリスクがある。外資系企業で一般的にこの原則が適用されているかどうかは知らないが、安心して長期的に働くためには重要な要素だと感じている。

(上記の文章と図表は全て筆者のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を固く禁じます)