新「会社人間」主義ーローテーション

人事制度としてのローテーションは、大企業にだけ許された特権かもしれない。中小企業では、そんな用語を持ち出すまでもなく、人員が少ないので一人で何でもこなすのが当たり前である。大企業では、事業部や事業所が沢山あるので、色々な職務や事業所を計画年数毎に経験させることにより個人の能力を向上させ、幅広い分野に対応できる人材を育て、会社の戦力アップに結びつけていく。将来経営者となりうる卵に、色々な部門の経験とノウハウを積ませておくことは意味のあることである。

ローテーションにカウントされるのは、
a.事業所間の転勤・・・東京本社→札幌支店への転勤など
b.事業部・職種の異動・・・本社内での人事部から経理部への異動など。
c.関係会社への出向・・・米国子会社への出向など
であるが、製造業の営業や管理部門では4~5年毎、都市銀行など金融機関では、2~3年毎の異動が一般的であろう。
ローテーションの得失を整理すると以下のようになる。
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ローテーション制度は、全体としてみれば、会社と個人双方の活性化に大きく貢献してきたことは確かだと思われる。しかし、個別に見ると問題も多い。これらの問題点を考慮し、最近では、「勤務地限定社員制度」や「役員待遇の研究委員制度」などを採用するところが増えてきている。
今後は、より個別管理のレベルでローテーションの適否を判断し、会社も本人もハッピーとなる配置を実施していく必要がある。
(新「会社人間」主義ー私の考える「ホワイトカラー」- 1999年1月より

外資系中小企業に身を置く現在、ローテーションの意義を改めて感じる。人的余裕の日本の大手企業が羨ましくもある。こちらは余裕がないから、どこの事業部も同じ人間で闘い続けるタコツボ状態になってしまい、部門間ローテーションを行って経営幹部を育てていくことは難しい。替わりに、外部市場からの出入りが同様に機能を果たすのだが、採用の都度、エージェントに高額の成功報酬を払って新しい人材を育てていくプロセスがときに大きな無駄に感じることがあるのは私だけだろうか。

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