新「会社人間」主義ー独創性

 近頃の経営者が好んで口にする”独創性”という言葉。
確かに、芸術だけでなく、ビジネスの世界においても重要な要素ではある。
だが、皆が独創性を発揮する社会を想像してみたまえ!人の意見に左右されず、自らの発想だけを信じ、周りの言うことなど聞かない輩が勝手に行動する。これで組織が持つだろうか?社会が安定するだろうか?考えるだけでもぞっとする。
 恐らく、経営者の本音は「自分を感心させるような面白いアイディアを考え出す人材が欲しい。」ということであろう。つまり、当面の商売に役立つ限りの独創性であり、自分が許容できる範囲での独創性であり、最初から枠をはめた独創性である。しかも、当の本人がかつて独創性を発揮したから偉くなったのかは全く定かでない。
 他人と違う発想で新しいことを考える人材は、確かにいたほうが良いが、皆がそうなる必要もないと思う。

独創性に必要な資質とは何か。読売新聞98年5月18日に掲載された藤原正彦氏の記事から抜粋してみる。

・独創性は頭というより性格に関係が深い・・・例えば傲慢さ。権威者が何と言ったって、『そんな理論くそ食らえ』と思うようでなければ独創的な仕事はできません。同時に野心があって、攻撃的で、自信過剰なくらいでないと駄目です。
・楽観的であることも大事です。数学者は、『こんな理論が成り立つんじゃないか』と夢見て研究する訳です。それは、高い山の頂に美しい花を取りにいくようなものでね。しかし、なかなかうまくいかない。挫折してはふもとに戻る。その繰り返しです。楽観的な人間はそれでも自分を支えきる。
・私はだれもが独創性を持つべきだとは思いません。さっき言った通り、傲慢だったり攻撃的でないといけないわけですから。そんな人間ばかりだと世の中がメチャクチャになってしまう。しかし、時流に流されず、自分を失わずに生きていくことは誰にとっても大事でしょう。それが普通の人にとっての独創的な生き方なのだと思います。
(新「会社人間」主義ー私の考える「ホワイトカラー」- 1999年1月より)

元々、音楽に興味があり作曲もしたことがある身としては、「独創性」という言葉には敏感に反応してしまう。娘が足を一歩踏み入れた絵描きの世界も、独創性と商業性の狭間で揺れる大変な戦場だ。一般のサラリーマンの世界にも「独創性」と言えるものは沢山あると思うが、Steve Jobsのようにこれを実践した経営者以外に安易にこの言葉を使ってほしくないと思うのは私だけだろうか。


(ここに記載した文章は全て筆者のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を堅く禁じます。イラスト作成は、「霧」のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を堅く禁じます。)


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