新「会社人間」主義ー仕事の完成度と上司

手でこね回すように、丁寧に仕事をしている者がいる。
あるいは、子供がままごとの茶碗や箸をいじくり回すように、際限なく時間をかけて書類を作成している者がいる。本人からすれば、少しでもましな作品にしようと努力している(あるいは、そのように周囲に見せかける)つもりかもしれない。

しかし、これは会社の仕事における根本的なことを見逃している。
仕事の完成を決めるのは本人ではないのだ!
決めるのは上司である。どうせ修正が入るに決まっている。とすれば、八分目程度の出来でさっさと上司に相談してしまったほうが良い。チームで仕事をするというのはそういうことだ。少ない労力で最大の成果を上げるためにはどうしたらよいかを考えながら、仕事を進めるのが良い。それが組織と個人の双方に良い結果をもたらすのである。過度の丁寧さは、仕事の遅れと長時間労働の一因にもなり、有害ですらある。

もっとも、あまりに出来のレベルがお粗末で、大量に修正を入れなければ使えないような代物を提出すると、本人の能力を疑われるからこれも困る。どの程度のレベルなら合格点がつくかについては、上司が日々の業務を通じて、本人に伝えるようにしていかなければならないし、本人も日々のやり取りの中でそれを感じ取っていかなければならないのである。
(新「会社人間」主義ー私の考える「ホワイトカラー」- 1999年1月 より)

2017年の今は、日本国の首相以下、政府まで本気になって「働き方改革」を進めようとしており、とても良いことだと思う。ITシステムや仕事の手順の明確化等により必ず進展はあると思うが、一方で、一人一人の意識を変えていくことも重要である。仕事は、(それを提供する)顧客の方を向いてすべきものだから、まずは、顧客目線の代わりとして、上司のチェックを意識した方がよい。自己満足でしていたら時間がいくらあっても足りない。

余談だが、これを書いた当時の状況を振り返ると、必ずチェックを入れる上司がそばにいてうっとうしく感じたことを思い出す。他方、褒められた記憶が全くない。今の自分が部下からそのように感じられないように自戒したいものだ。

(ここに記載した文章は全て筆者のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を固く禁じます。)