新「会社人間」主義ー新入社員のマナー
さすがに今はこのような慣行はなくなっていると思うが、かつてはあった。愚かな慣行だと一笑に付してしまうのは簡単だが、よくよく考えてみれば、エリートが人格的にも周囲の尊敬を集めるに足るかどうかをチェックする踏み絵と解釈することもできる。優秀であることは、やがて仕事で証明できるようになる。仕事もできないうちから、「私は〇〇大学出身です。コピー取りなんかやってられません。お茶汲みなんかできませんョ。」と言っているようではダメなのである。教えてもらわなければ何もできないという点では、暫くの間は、赤ん坊のようなものだ。早く仕事を覚えたいのなら、まずは、周りの人に可愛がってもらうための真摯な努力が必要である。
自身の失敗談。
銀行の支店というところは、お金に囲まれているのでなんとも窮屈に感じたものだが、お昼になると、二階に上がって定食を急いで平らげた後テレビを見る時間が多少はあった。ちょうど六大学野球をやっており、高卒のベテラン社員が「君のところの大学が出ているよ。」と話を向けてくれた。元来野球というものに興味がなかった私は、「そうですか。」とだけ答えてしまったが、この素っ気ない返しが良くなかった。後で、飲み会に連れていかれて、散々責められた。「せっかく話題を向けてやったのに!(可愛げのないやつだ!)」と。
会社の仕事にも、法律や科学・技術など専門性の高い分野は多いが、まずは実務の流れを押さえるのが先決である。これに習熟するまでの間は、しばし最高学府を出たという誇りをタンスの奥にしまっておくにしくはない。やがて、学生時代に学んだ索引を引っ張り出す時期が来る。10年も先ではなく、1・2年後のことである。
(新「会社人間」主義ー私の考える「ホワイトカラー」 1999年1月 より)