外資で働く(9)-ボーナス(STI)

大手の日系企業の年間ボーナスは月給の概ね4~5ヶ月分であるが、具体的水準は春闘で決まる。会社の支払い総源資を決めてから各人の配分を検討するプロセスであり、個人の給与からすっきりと支給額を計算できるケースは多くはなかろう。職能給に基づく等級制度を採る会社なら、等級毎の基準額を決め、個人評価によりプラスマイナスするといった具合である。支給金額を見ても自分がどのような評価をされているのかが分かりにくく、モヤモヤした気分になる。

外資系企業では、ボーナスのことをSTI(Short Term Incentive、短期インセンティブ)と称し、個人の給与に基づく単純な計算式で算出する例が多い。

たとえば、月給の12ヶ月分を固定年収とし、STI=固定年収×○%で計算する。比率は、職位や責任の重さに応じて高くなるが、10%から5060%の範囲に収まることが多いだろう。

評価項目とウエイトのイメージを下表に示す。

 


区分

ターゲット項目
ウエイト
(親会社)企業グループ目標
EBITA(営業利益)
10%
会社/部門目標
EBITA(営業利益)
15%
GP(粗利益)
15%
Revenue(売上)
10%
個人目標
〇〇〇
20%
△△△
15%
×××
15%
           計
100%


売上・利益といった会社や部門の財務目標と個人の目標を、合計が100%になるようにウエイト付けする。年度初めに上司と部下が話し合い、合意の上で署名をするところがポイントであり、「労働は契約である」ことを思い起こさせてくれる。ガラス張りだからやりがいも出てくるし、会社業績悪化によりボーナスが減っても一応の納得性は得られる。

目標(ターゲット)を100%達成すれば、予定通りの金額がもらえるが、未達や過達の場合の計算式もオープンにされている。例えば、達成率が80%未満ならボーナスが出ないが、110%達成すれば150%、120%なら200%のもらえるといった具合である。

日系企業外資系企業のどちらのやり方が良いかを論ずるつもりはない。

会社に一蓮托生し、長期にわたって自分の処遇と成長を預けるつもりなら、日本企業の「どんぶり方式」は必ずしも悪いとは言えない。
報酬と評価の関係が常に明確でないと我慢が出来ない人は外資系に向いている。ただし、雇用を含め労働条件が不安定であるリスクがあることも勘定に入れておく必要がある。

(ここに記載した図表と文章はすべて筆者のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を固く禁じます。)