外資で働く(17)-福利厚生

人生をやっていると、失ってありがたさを知るものに出会う・・・昔の恋人、別れた配偶者、先に逝った大切な人々等・・・

日本の伝統的な大企業の福利厚生制度(Fringe Benefit)にもそのようなものが多い。エジソンをルーツとする米国の名門企業との合弁会社における労働条件の交渉をする際にこのことに気づかされた。

例えば、
労働災害付加補償
ー(企業グループで加入する)団体生命保険・傷害保険制度
ー休職期間
等である。

労働災害に会えば、国の労働災害保険から補償されるが、障害認定が確定し具体的な金銭補償がなされるまで待たされることが多い。日本の大企業では、窮状に陥った社員と家族を支援する趣旨で「労働災害付加補償制度」を設け、死亡の場合には3000万円以上を支払うようにしているところが多い。遺児がいる場合、成人まで返済免除の奨学金を支給する会社もあった。外資系企業の場合、ここまで手厚くしているところは少ないだろう。

連結で万単位の社員を抱えるほどの日本の大企業であれば、生命保険会社と団体特約契約を結び、グループ社員と家族を対象とした割安の生命保険・傷害保険を提供するところが多い。なかには、定年後、70歳になるまで加入を認めるところもある。外資系でここまで用意しているところは極めて少ないのではないか。

体が資本の人間たる以上、病気や怪我で長期療養をせざるを得ないことがある。疾病の種類や勤続年数にもよるが、日本の伝統的な大企業では、最長で3年程度の休職を認めるところがある。休職期間中は原則として給与は支払われないが、雇用契約が継続しているという安心感が本人と家族の復帰への意欲を支える力は大きい。短期間での業績に重点を置く外資系では1年程度が標準で、それ以上長い休職を認めるところは多くはないのではないか。

これらの手厚い制度は、社員が安心して長期にわたり働く基盤となるが、在職中にこれらの大切さに気づく社員は意外に少ないと思う。一方、会社にとってはこれらは給与とは別の隠れた労働コストになる。外資系の給与のほうが高く見える場合でも、福利厚生も含めて総合的に比較してみないと実質的にどちらの処遇条件が良いかは、分からないのである。

入社する前に処遇制度の細部情報を漏れなく入手できない場合には判断が難しいところではあるが、表面的な給与の高低だけに目を奪われて転職するのは危険である。

(上記の文章はすべて筆者のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を固く禁じます)