外資で働く(20)-いつまで働けるのか?

伝統的な日本の大企業に勤める人の多くは、60歳までは当然働き、その後も順次65歳まで働くことを期待して日々の業務に精励している。業績悪化による大量の早期退職や事業売却等の事態に遭遇しなければの話であるが・・・

日本に拠点を持つ外資系企業も日本の労働法の適用を受けるので、定年延長か再雇用か等の区分は別にして、従業員の生年月日に従い順次65歳までの雇用機会の提供を義務づけられていることは、日本企業と同様である。

現実はどうか?

自分の例を話す。
50歳を過ぎた頃から本格的な転職活動を始め、採用エージェントを通じて応募したが、年齢を理由に書面審査で終わるケースが大半であった。信頼する知人の伝手で外国人のエージェントに面接し理由を聞いたところ、「外資系の多くは年齢を気にしている。40代半ばくらいまでの優秀人材を採りたがっており、50代以降はよほどエネルギッシュである場合を除いて難しい。」ということだった。現実はそうなのかと悟り、一旦、転職活動を辞めた。事情が変わり1年後にまた転職活動をすることになり、現在勤める外資系企業に採用された。54歳のときである。この会社には年齢差別はまったくない。60歳を過ぎて他社を勇退した方を部門の責任者として招き入れ65歳まで活躍していただいたのが良い例である。他にも50代半ばで入社し活躍している人は少なからずいる。

しかし、採用面接を通じ多くの候補者に接していると、年齢を気にしない外資系企業は一般的ではないと感じる。名前を知らぬ者のないブランド企業の出身者の話によれば、(一部の幹部を除き)50歳以上で残っている人はほとんどおらず、従業員は自分の成果だけに注力し、5年程度で会社を去っていくのだそうだ。複数の人から聞いた話なので恐らく事実であろう。

応募者が、この辺の本当の情報を正確に掴むことはなかなか難しく、外資系企業に転職する場合のネックのひとつと言えよう。

一部のクリエーター的な仕事を除けば、どんな仕事もひとりだけでできるわけではなく、自分のことだけを考えるような人達の中にいて楽しいはずもない。定年が決まっていてもその前に去らなければならない不文律がある会社に勤めるのは不幸であろう。日本の大企業でぬるま湯のような毎日を過ごすのが良いとは限らないが、何事もバランスと程度の問題だと思う。

昨日インターネットで、J.Maureen Hendersonという人が書いた「今の会社に長居をし過ぎたことを示す4つのサイン」という記事を読んだ。

・「車輪の再発明」を何度も見てきた
・存在が当たり前になっている
・皆から頼られる
・成長の余地がない

以前うまくいかなかったアイディアが会社内で何度も繰り返されるのを目にするほど長く勤務しているがゆえに、「あの備品がどこにあるか」を含め何でも知っている便利屋として周りから頼りにされる。一方で、これ以上の昇進は期待できず、成長が望めないのならば、転職を考える時期だという内容である。

しかし、全員が社長や役員になれるわけではない。各々の役割に重要性があり、個々人が責任を果たすことによって組織は存続していく。成長が望めないと短絡的に考えて転職すれば良いのか、という疑問は残る。 

England expects that every man will do his duty.
英国は各員がその義務を果たすことを期待する。
(ネルソン提督がトラファルガー海戦の際に発した信号文)

(上記の文章は全て筆者のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を固く禁じます)