外資で働く(21)-ダイバーシティ(Diversity)

グローバルに事業を展開する企業では、人種・国籍・年齢・性別等を問わずに人材を活用することが当然とされている。多様性を「競争優位」の源泉として、組織全体を運営する、ダイバーシティ・マネジメントを行っているからである。

日本企業から外資系企業に転じて肌で感じるのは、ダイバーシティーについては外資系の方がましだろうということである。

年齢については、管理職に登用する際に年齢を気にすることはさほどない。ポジションにふさわしい優秀人材と判断すれば、20代でも管理職に登用することはあるし、日本企業を定年退職した60歳以上の人を幹部管理職として採ることもある。今、勤めている会社はスウェーデン系であるが、親会社のCEOは今春、外部から招いた40代前半の人である。ほとんどの直属部下は彼より年上になるが、まあそんなものだろうと受け入れているのだろうと思う。

国籍に関しては、親会社の色が多少出る。欧州系だと母国出身者や白人中心で固めるケースがあるかもしれない。親会社がドイツからスウェーデンに変わって以降、他の欧米諸国出身幹部からスウェーデン人幹部に徐々に入れ替わっていく様を見た。適材だから登用されるのだろうが、結果を見る限り、優秀さの中には同国人であるという条件も入っているように思えなくもない。米国系企業の実態は詳しく知らないが、訴訟リスクが高い社会ゆえに、ダイバーシティへの配慮はもっとあるのではないかと思う。

性別については、日本は国際比較で見ても管理職に占める女性の登用比率が極端に低く(2013年で11.2%(総務省統計局労働力調査))、35%から40%以上になっている米国、フランス、スウェーデン等の欧米諸国に大きく後れを取っている(「成長戦略としての女性活躍の推進」経済産業省経済産業政策局経済社会政策室、平成26年7月)。
外資系企業は親会社の影響を受けるから、伝統的な日本の大企業より、女性の登用を進めやすいと言える。海外には女性幹部が沢山おり、彼女らとコミュニケーションを取るのが普通の風景になっている。だから、管理職を外部から採用する場合、男性を前提に考えはしない。実力本位である。ただし、今の組織(上司や部下)におけるフィット感は考慮する。どんなに優秀そうに見えても、ピープルマネジメントに難があり、周りとうまくコミュニケーションができないリスクのある人は採らない(これは男性の場合も同じである)。

就職適齢期の娘から、日本企業と外資系企業のどちらが良いかという相談を受けたとすれば、「きちんとした労務管理をしている会社」という条件付きにはなるが、外資系を薦めることになるだろう。

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