新「会社人間主義」-雑談のイニシアティブ

私が、快活に、ざっくばらんに、大胆に話していると、やがてはあまりに率直すぎ、調子に乗りすぎてしまうのである。
ヘンリー・ミラー 「南回帰線」 (新潮文庫
 
会社では雑談をするにも暗黙のルールがある。仕事もろくに出来ない新米や若手が勤務時間中に公然と雑談をしていけないのは当然であろう。
その時間は仕事をしていないことが明白だからである。

雑談のイニシアティブを取るのは原則として上司であり、ベテラン社員である。彼らは許される程度というものを知っており、限度を知っている。彼らから話しかけられたら口を開いて良い、という合図である。しかし、図に乗っていつまでも続けてはいけない。潮時というものがありタイミングというものがある。程よいところでまた仕事に復帰しなければならない。
 
プロのサラリーマンの雑談の中には、仕事のヒントになるような話題が含まれていることが多い。職場の雰囲気を和ませることによって、その後の組織の効率を上げる効果があることも忘れてはいけない。単に自分の趣味や興味をしゃべりまくるだけではないのである。そういう話は、恋人や家族との時間にしたら良い。雑談は、周囲に与える影響という点で、有意義なものと、そうでないものに峻別される(家庭で、奥さんや子供に相手にされない分を会社で発散してはいけない。周囲の迷惑になる!)
 
雑談は職場の潤滑油であり、気分のリフレッシュになる。一日中しかめ面をして仕事をしている人の能率が、高いとは限らない。雑談をしようとする動機には、仕事の能率が落ちてきたことを感覚的に悟って活力を回復しようとするリスク回避行動も含まれると思う。

建康的な笑いは、再び仕事に戻る際に新たなやる気とエネルギーを与えてくれるものであり、会社に来て良かったと思える瞬間でもある。

(新「会社人間」主義ー私の考えるホワイトカラー 1999年1月 より) 

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