外国人幹部とのコミュニケーションのやり方(その3)

最終出勤日まで数日を残すのみとなり、大人しく過ごしたいところだったが、グローバル人事本社から理不尽なメールが来たので、カウンターを返した。

昨年末、グローバル人事の本社から突然、各地のローカル人事責任者向けに、「明日までに、〇〇グローバル研修(英語によるドイツでの実施)の参加希望者を登録せよ!」というメールが来た。慌てて適任者を人選し、上長の了解も得て、本人に参加フォームへの登録をさせた。部下を持つマネージャー向けのリーダーシップ研修であり、選ばれた者のモチベーションを上げることが期待できた。

つい最近、グローバル人事本社からローカル人事向けに、参加決定者リストが配信され、見れば、日本から申請した3人の内、2人は参加否認、1人は保留になっていた。「希望者多数につき参加時期をずらす」というなら分かるが、一方的かつ官僚的なコミュニケーションで、調整に苦労するローカル人事の立場を無視したものと感じたので、少し強い調子で、全受信者に向けて以下のメールを送った。


To Persons in charge,

Thank you for the feedback, but I am disappointed with the stated selection results:

     1.No APAC nominees(incl. Japanese) are confirmed.
     2.As for Japanese 3 nominees, the result is 2 “denied” and 1 “waiting”.
     3.Mr. 〇〇〇, finance manager is denied with the reason that he has only one direct report, which is not true(he has 5 direct reports consisting of 2 regular employees and 3 staff from external agencies). 

I therefore strongly ask you to revisit your judgement and include him within the confirmation list.


Only with the judgment by the attached file on your previous mail, we are wondering how to give the nominees such a painful feedback avoiding lowering their motivation and engagement.


Thanks in advance for your understanding and reconsideration.

 

Regards,

 

抄訳すれば、
「結果の連絡をくれたことには感謝するが、内容を見て失望している。
1.参加者リストには、(欧州各国出身者だけで)APACからは日本を含め1人も入っていない。
2.日本からは3人推薦したのに、2人が否認、1人が保留(1人も決まっていない)。

3.否認とされている経理マネージャーの理由が部下が1人しかいないということだが、誤りであり、実際には5人いる。

従って、人選の見直しを行い、(少なくとも)経理マネージャーを参加させることを強く要望する。」

というものである。

今回の募集対象は欧州・中東・APACであったが、決定者リストには欧州・中東から20名以上入っているのにAPACからはゼロ・・・愕然とした。黙って見過ごすわけにはいかないと思って、嫌われるのを承知で発信した。

数分後にグローバル人事幹部から、筆者を含むローカル人事全員に向け言い訳メールが送られてきた。

「ミスター〇〇〇、率直な意見をありがとう。
実は、コストや効率を考え、APACの人にはアジア地区での時期をずらした開催をオプションとして用意していた。だから今回は、APACからの希望者全員を却下した・・・別の研修プログラムへの参加の可能性も含め、対象者のエンゲージメント向上に資するように努力したい・・・」


おいおい、それでは後出しジャンケンだろう!

とは思ったが、筆者のメールで一定のインパクトを与えることができたから、まあよしとしよう。

 

まとめに入る。

1.外国人幹部とのコミュニケーションをする際に、怯んではダメである。おかしいと思うことには率直に意見を出すことである。洋の東西を問わず、真摯で率直な意見には耳を貸すものである。こうすることで、生意気なやつだと思われてバッシングを受けるような会社ならさっさと辞めた方が良い。

2.タイミングと勢いが重要である。すぐに反応すること、こちらのパッションが伝わるように無礼にならない程度に勢いを表現することである。

お行儀よく、英文ライティングの手本のようなメールをしていれば聞いてくれるとは限らない。国籍・人種が違っても、所詮は人間同士のコミュニケーションである。「迫力」と「本気度」を見せることが時には必要である。

3.ただし、ブチ切れてはいけない。それでは、EQの欠けた、短気なおっさんということになってしまう。「抑制された」怒りと迫力を見せることが肝要。ありがたくなくても最初にThank youを入れておく・・・こうすることで、喧嘩モードを和らげることができる。

 

今回のケースから、自分が日本企業の本社でグローバル人事を取り仕切っていた頃を思い出した。海外ローカル法人に対し、一方的で配慮のない指示をしていた(のだろう)。彼らは、内心では面白くないと思いつつ、従っていたのだろうと思う。逆の立場で外資に勤める今だからから、分かることである。