経団連春季交渉方針、ジョブ型雇用「検討必要」について

春闘の季節が始まり、日経新聞(電子版)2022年1月18日に、以下の記事が載っていた。

「今回の報告では、年功型賃金について「転職等の労働移動を抑制」「若年社員の早期離職の要因の1つ」と指摘したのも特徴だ。新卒一括採用、終身雇用など日本型雇用システムの見直しを一層加速させる必要があるとした。見直しの方向性として、主体的なキャリア形成を望む働き手にとってジョブ型雇用が「魅力的な制度となり得る」と評価した。各企業が自社の事業戦略や企業風土に照らし、ジョブ型の導入・活用を「検討する必要がある」と結論付けた。」

これからの日本企業は「ジョブ型」雇用をどんどん推進すべきだという雰囲気があるようだが、「メンバーシップ型」と二律背反ではないと筆者は認識しており、また、日本企業の中でも(特に中小企業では)「ジョブ型」を古くから実施してきたところは多いと思われる。

事務系職種が大半の金融機関等は、新卒を採用してから配属を考える運用を今でも続けているかもしれないが、技術系・事務系の様々な職種を抱えるメーカーでは、「採用してから仕事を割り振る(メンバーシップ型)」運用は不可能であり、必要な職種・職務に関する採用計画に基づき採用・配属するフローである。もっとも、欧米企業では必須のJD(職務記述書)に基づき採用・配置・評価・育成するシステムを整えているところは少なく、グローバル規模でベストタレントを確保する上での課題になっている。

メンバーシップ型には、職業経験ゼロの人材を一人前のビジネスパーソンに育成するシステムの側面もあり、これは日本企業の強みとして大切にすべきと筆者は考える。

「ジョブ型」、「メンバーシップ型」は、ビジネス社会の中で作られてきたルールに過ぎず、各々の長短を冷静に分析した上で、環境の変化に合わせてハイブリッド案を含め検討し変えていけば良い。

もっとも、長らくメンバーシップ型社会の中で形成されてきた働く側のマインドセットを変えることは意外に難しく、この部分が日本人の労働生産性や主体的なキャリア形成の促進の鍵になると思っている。

2020年に経団連タイムズに「日本型雇用システムの将来展望(全8回)」を寄稿させてもらったが、筆者の基本的考え方は当時と変わっておらず、参考までに改めて紹介したい。

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(イラスト作成:葉ヶ竹霧)

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