「あなた方、間違うよ」~経団連会長が語る日本経済の課題~について

NHK News WEB 2020年1月9日 17時33分に掲載された記事について、日本型雇用を再検討する時期に来ているとの中西経団連会長が語る内容に目新しさはないが、引用の後に若干の私見を補足してみたい。
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    皆が同じ時期に就職し、年を重ねるに従って同じように出世をし、そして同じ会社で定年まで勤め上げる。中西会長は、こうした日本型雇用と呼ばれる仕組みを再検討する時期に来ていると指摘しました。

中西会長

「いわゆる一括採用、終身雇用、年功序列という日本の働き方の現実が非常によく産業の発展に効いた、マッチした時代が、終わったということがまず第一の共通認識の出発点ですよね」 (中略)

中西会長
    「終身雇用を前提に人生設計すると、『あなた方、間違うよ』と。自分はこの職業を今はちゃんとできるように、しかも高度にやれるように自分自身をトレーニングするという風な考えを持ってください。とにかく、いい会社に入ったらずーっと保証される、そんなことはないよ、と」
    「一度、会社に入ってしまえば定年まで安定した生活を送ることができる」そんな時代は終わり、就職したあとも自分自身で能力を高め、成長を続けていくことが求められる時代に入る。中西会長はそう強調しました。                                             ******(引用終わり)**************

  
    「就職したあとも自分自身で能力を高め、成長を続けていくことが求められる時代に入る」・・・職業人として当たり前の心がけを、財界トップが今言わなければならないことに驚きを禁じ得ないが、理由は以下のようなものと思われる。
 


    1.終身雇用、年功序列制は崩れたと言われながらも、伝統的な大企業にはまだ残っている。逆に言えば、経営的に余裕のない中小企業には元々ない。   

    2.ただし、厳しい経済競争下、大企業も業績が落ちれば容赦なく早期退職等の人員削減を断行する(2000年前後から続いている現象)。      

    3.しかし、大企業に正規採用として入社した社員の多くの意識はいまだに、「そうは言っても何とかなるだろう」ではないか(いざとなれば転職を厭わない中小企業の従業員の意識とは違う)。 
   

    筆者がかつて在籍した会社はリーマンショック後の赤字続きを理由に姉妹会社に吸収合併された。職場の後輩から届いたメールによれば、早期退職募集がまた始まったそうだが、50歳になった彼は今回は見送り、2~3年後にまた早期退職募集があれば応募しようと考えているようである。
    大企業に勤めていても、自分の労働市場での価値を意識し、スキルや能力の向上に励むことはできると思うし、筆者はそのつもりで研鑽し外資系に転職し、最終的に自営業にたどりついた。        

    後輩諸兄は、慣れ親しんだ職場にいる方が楽かもしれないが、まだ何とかなるという幻想を捨て、勇気を持って新しい環境にチャレンジしてほしいと願う次第である。