「新会社人間」宣言

経営者でない者は、通常は会社に勤める。そうすると、一日のうちで起きている時間の過半は会社の為に費やされるわけであるから、「会社人間」であることはやむを得ないことである。しかし、これまでのように会社べったりで依存型のままでは生きていけない時代になってきたし、人生の過ごし方としてもつまらない。今まで論じてきたことのまとめとして、ここに、「新会社人間」主義を宣言する。

「新会社人間」に必要な7箇条
1.自立:精神面を含め、他者(会社や上司等)に頼りきってしまわないこと。
2.プロフェッショナル:社外に出ても通用するスキルを身につけること(外に出たら、いまの値段(報酬)で買ってくれると思うか?)
3.成果と報酬:報酬に見合う成果を出しているかどうかを意識すること。年齢や勤続とともに報酬が増えて当然と思わないように。
4.チームワーク:分からないことは素直に聞き、聞かれたら親切に教えてあげること。教えあい、助け合いながら共に成長していく気持ちを忘れないように。
5.自戒:自分だけで大きくなった(成長した)と思わないこと。多くの人の惜しみない助力により今の自分があることを忘れないように。
6.知力:本当に頭を使い、考えてから行動すること。汗だけ流して満足してはいないかを、自問自答するように。
7.正しい倫理観:子供達に説明できないような、倫理を曲げた仕事をしないこと。

かつて、イギリス人の友人が日本の若者を評して、spoiledであると繰り返し言っていた。Spoileを辞書(研究者 新英和中辞典)で引くと、「(甘やかしたりして、人の)性格(性質)をだめにする」とある。「新会社人間」に必要なことは、甘えを捨て、大人になる努力をすることである。人生のリスクは自分が背負うのだという自覚を持つことである。

「新会社人間」は、差し迫った必要もないのに、遅くまで会社に残って書類をまわすふりをしなくて良い。やりたくもないのに、高い金を払って職場のゴルフコンペに出ることもない。その替わり、仕事で一生懸命に成果を出す努力をすることだ。自らの人生の目的は何か、その中で、会社生活で達成したい部分は何なのかを常に自問しながら行動することだ。

人生の目的が、出世階段を昇っていく(英語でもclimb the ladderという)ことにあるのなら、その目標に近づくよう振る舞ったら良い。嫌なゴルフや長時間労働を通じて会社に奉仕の精神を売り込むことが役に立つと思うのなら、そうしたら良い。大切なのは、自分の本当の気持ちをごまかさないことである。出世したいと気持ちを「愛社精神」などという耳当たりの良い表現にすりかえてはいけない。自分の気持ちはごまかせても、周りにはすぐばれてしまうものである。

(新「会社人間」主義ー私の考える「ホワイトカラー」- 1999年1月 より)

当時はまだマネージャーにもなっておらず、若造の遠吠えにしか過ぎないような気分で書いた記憶もあるが、サラリーマン人生の終局が近づいた今も、考え方の基本は全く変わっていないことに気づき、驚いてもいる。


イラスト作成:漫画家「霧」、無断転載厳禁イメージ 1