個人事業主の労働効率

会社勤めの人事屋から、個人事業主としての人事コンサル業に転じて2年目となった。

自分の自由になる時間が多いと罪悪感につながるマインドセットから脱却し、真に必要な労働を自らの責任において行うことにようやく慣れてきたこの頃ではある。

コロナ禍のせいで、鳴り物入りで改正された「働き方改革」関連法の影が若干薄くなっている印象もあるが、フリーランスになってみて「労働時間」に関する意識が180度変わったことに気づかされている。

今は、顧客のための資料作成やコンサルに費やす時間をきっちりと0.5時間単位で記録しながら作業をしている。仕事を始めたらひたすら作業に没頭し顧客に満足してもらえる成果物を出せるかどうかに注力する。ただ、1日の中でこのように集中できる時間はせいぜい4~5時間程度であることにも気づかされた。

サラリーマン時代に、上司・部下その他の関係者との打合せ(たまに世間話)などに費やした時間は、今やっている一人作業の労働密度より薄かったし、分からないことを気軽に聞ける人材が揃っていた点でも恵まれていたと思う。9時から5時まで職場にいれば働いたことにはなるので、自営業主に比べれば気楽なものだった。

一般に「労働時間」とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされているが、結局のところ、ホワイトカラーの給与も成果リンクというより、拘束時間に対する代償の側面が強かったのだと改めて思わされる。

 

とすれば、「働き方改革」の向かう方向は、成果重視の効率的な働き方ということになるのだろうか? だが、他人の指揮命令下でどこまで「効率的」に、言い換えれば自分にとって最も働きやすい環境を作れるかどうかは矛盾する課題のように思われる。自分の都合だけでなく組織全体の効率を考えなければならないからである。

その点、個人事業主フリーランスの場合は、顧客に要求されたアウトプットを出すための工夫は労働時間を含め100%自己責任で行うので、やりようによっては大幅な「働き方改革」が実現できる可能性はある(ただし、適正な価格で受注することが前提となる)。

 

今般の改正法で事業主に課された65歳以降の就労機会確保義務の選択肢の中に、業務委託が入っていることは、今後の働き方改革のひとつの可能性を示しているように筆者には思われる。

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