新会社人間主義ー経営者とサラリーマン

サラリーマン生活の折り返し点に立って今までを振り返る時、常に脳裏に浮かぶのは、25年前の+父の姿だった。私が高校に入学するその年、父は零細企業を辞めて独立した。しかし、第一次オイルショックにさしかかった時でもあり、長い間、商売で苦労した。
 そういう時期にあっても、私は親の苦労など少しも分かろうとせず、ただ勉強さえしていれば良いと思い込んでいたのであるが・・・

思うに、規模の大小を問わず経営者とは、「全てのリスクを一人で負う者」のことであり、それとの対比で見た場合、やはりサラリーマンほど気楽な稼業はないと言わざるを得ない。これは、サラリーマン上がりの雇われ経営者にしても全く同じことである。

(新「会社人間」主義ー私の考える「ホワイトカラー」- 1999年1月 より)

サラリーマンの終着地点がすぐそこに迫っている今読み返しても、思いは変わらない。
父が偉かったのは、決して子供の前で仕事の愚痴をこぼさなかったこと。やがて、商売替えをして成功を収めることになるのだが、それを知ったのは、父と一緒に酒を酌み交わすようになった十数年後のことである。一人で考え、工夫して、スキルと経験がない世界に足を踏み入れやり抜く意志の力だけでなく、多くの人々のサポートがあったからこそであるが、貴重な人脈は、他人に誠意を持って尽くす姿勢のお蔭でつくられたのだと思う。
これからの私に同じことができるだろうか。

(イラスト作成:霧、無断転載を禁ず)

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