外資で働く(34)-どこまでイエスマンを演じれば良いか

サラリーマンをやっていく上で、上司との関係ほど難しいものはないかもしれない。
 
外資系企業では、直属上司が自らの処遇に及ぼす影響が強いので、日本企業に居るとき以上に上司の顔色を窺うことに気を遣う。事実、採用面接で過去の転職理由を聞くと、上司が替わったことを挙げる例が極めて多い。
 
新たな上司ととりあえずうまくやっていくために、ひたすら「イエスマン」を演じる輩がいるが、無論、これでは駄目である。上司が間違った判断をしたときでも「ハイハイ」と言うことを聞いていたら、組織としてまずい方向に行くだけだからである。
 
一方で、上司の指示や命令に一々反駁するような部下でも困る。こんな部下は上司として使いづらくて仕方ないし、組織効率も良くない。部下の部下からすればどちらの言うことを聞いたら良いのか迷うばかりでチームとしてのパフォーマンスも落ちる。
 
筆者の経験知では、7:3くらいの感覚で上司の指示・命令に対して、「イエス・ノー」のコミュニケーションをするのが良いと思われる。7割くらいは素直に指示通りに動くが、3割くらいの頻度で修正・反対の意見・提案をするのだ。心ある上司であれば、部下からの苦言・提言を聞く耳があり、その結果、良い結論に導くことができれば組織として良いパフォーマンスを出すことができ、周り回って上司と本人の評価も上がるはずだからである。気持ちよく部下と仕事をしたいと思うことはあっても、ロボットのような「イエスマン」だけを部下に持ちたいと思う上司はそう多くないであろう。
 
問題は、心ある上司かどうかの見極めである。ここを読み違えてしまうと、誠意を持って提言したつもりでも、うるさい部下と疎まれて追い出されてしまうことになるかもしれない。
もっとも部下から上司のタイプを診断することはそう難しくはない。上司・同僚・部下に対する日々の彼の言動を観察していれば「イエスマン」か否かは分かるものである。
不幸にして救いがたい「イエスマン」の上司と巡り合ってしまったら、これも修行と思って我慢するか、転職するかの選択をすることになるだろう。