外国人幹部とのコミュニケーションのやり方(その1)

日本企業であれ、外資系企業であれ、グローバル規模で事業を展開する企業で管理職ポジションに就く限りは、自社や他社の外国人幹部とコミュニケーションを取る機会を避けて通るわけにはいかないだろう。

その際に、最低限心得ておくべきことを、思いつくままに書き出してみたい。

1.英語力:メールと会話で、伝えたいことを正確に表現できるレベルの英語力は必要である。英語力は、「語学」として「勉強」した時間と、実務経験の総和で決まってくるからTOEIC等のスコアのみで判断することが常に正しいとは限らないが、一般に、800点以上はないとビジネスレベルのコミュニケーションは難しいと思われる。

因みに、英米語のネイティブ国民(英国人、米国人等)と同じような発音で話せる必要は全くない。多国人のコミュニケーションツールとしてのInternationalEnglishが書けて話せれば良い。米国人にしか通じないジョークや略語(Abbreviation)を知る必要もない。英語を第二外国語とする多くの外国人の英語力もそれほどではないと達観して、むしろ、度胸で勝負することも必要である。

2.異文化理解とDiversity(多様性):
日本企業に勤めていた頃、グローバル人事の担当者として、社員向けの日米、日中、日韓他の異文化研修を盛んに実施した。「多様性の尊重」もグローバル化時代の常識として学んだ。

3.多様性の現実:
頭で学んだ異文化理解を、現に接する外国人とのコミュニケーションに活かそうとするとしばしばギャップに悩まされることになる。彼、彼女のあのような行動は国民性のゆえなのか、個性によるものなのか?・・・ステレオタイプ的に断定するのは危険である。
 一例を挙げれば、依頼された問い合わせの回答をメールで返信すると、通常はすぐに、サンキューメールを送ってくるものだが、送ってこない外国人幹部もいる
(筆者の経験ではサンキューメールを返してくる人は9割以上であることを付言しておく)。

Face to faceの採用面接で60分間以上、候補者にペットボトルの水を飲む時間すら与えず、質問を浴びせ続ける幹部もいた(候補者の声がかすれてきたので、筆者が割って入って、水を飲ませたが、一気にペットボトルの3分の1以上を飲み干していた)。

非常に高位の幹部が来日した際、Dinnerの場を設けたが、社長以外のローカル(日本人)幹部と積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢は見られず、スマホをいじってばかり・・・家族の話題を向けたときだけ、喜んでスマホに入っている家族の写真を見せる・・・

外国人HR幹部が来日した際、依頼に基づき、日本人幹部とのOne on oneインタビューの場を設けたが、話を聞くのは最初の数分だけであとは、自分の意見をまくしたてるだけ・・・再来日した際に、改めて、日本人幹部に面談の機会を打診したら、全員からNo thank youの回答をもらった。

こうなると異文化というより、ビジネスパーソンとしての常識の問題と言えるかもしれないが、ポジション的に向こうが上であるときは甘んじて受け入れる他はない。

4.結局は人格の問題か?:
筆者が接してきた外国人幹部には人格的に素晴らしい人ももちろんいる。困ったことがありConfidential(内密)に相談すれば真摯に話を聞き、アドバイスをくれ、(ここが肝心なところだが)後で裏切られることもない。そういう人達とは会社を離れてからも付き合いたいと思う。

一方で、事務的なやり取りについては、即座に、" Great thanks 〇〇〇-san. Best Regards"というメールを返してくるが、本当に困ったときに核心部分に触れたメールをおくると「しかと」する。他の事務的なメールについては何事もなかったかのように頻繁に送ってくる・・・日本企業にいた際、エジソンにルーツを持つ米国の名門企業のHR責任者とやりとりしたときにも同じ経験をした。合弁会社の人事に関するプロジェクトを担当したが両親会社の意向の違いもあり交渉は難航した。彼が来日した際に、食事会などをすれば大いに盛り上がり、打ち解けたようなリップサービスをするものの、本国に帰った頃に、核心部分についてのメールをすると「しかと」ということが頻繁にあった。

結局は、人格と人間性の問題なのかもしれないが、この課題をうまくやらなければ自身の雇用を失うリスクがあるサラリーマンである以上、やむを得ないことと割り切るしかないのかもしれないとも思う。

だが、筆者としては、困難な局面に際し、高潔な人格をどこまで発揮できるかに関心があり、それはすなわち、EQということになるが、そういう人であれば洋の東西を問わず信頼することになる。