採用雑感(9)-人生の振り返り

「採用」という仕事が特段好きというわけではないが、人々が面接の場にたどり着くまでの活動の一端を垣間見ることができる点では、貴重な機会ではある。

これまでの人生の中で、何を考え、どのように行動してきたのかを、30分から1時間のインタビューの中から感じ取り、未来を予測する(=当社に入社したら、どんなパフォーマンスをしてくれそうかを予測すること)・・・短時間でこんな大切なことを読み取ろうとする「採用活動」は実に乱暴な活動だと思う。補助的手段として適性検査も利用はするが、直観に頼らざるを得ない部分も出てくる(これは応募者の立場からしても同じであろう。面接官から受けた印象等から会社のカルチャーを予測して決めたりするからだ)。

新卒採用の場合は、単純である。聞くことと言えば学生時代の活動しかないからだ。勉学と課外活動の状況を聞く中で、未来の可能性を推し量ることになるが、生きている期間も短いから似たり寄ったりの経験になるのはやむを得ない。同じような経験しかしていなくても、話の仕方がうまい人が得をすることもあるかもしれない。

中途採用(Mid-Career)になると話は別である。
色々な会社で経験を積んで今に至っているからには、当然、語るべき(人生の)ストーリーを持っているだろうとこちらは期待する。

どのように考え、行動した結果、今の応募者があるのかを、いくつかの代表的な質問をして推し量ることになる。例えば、「今までのキャリアの中で、最も成功した体験と(こうすれば良かったのにという)失敗体験を話してください」とか、「自分の性格の長所と短所として感じているものを2つずつ挙げてください」等である。

応募者に長所と短所を聞いたところ、「何なんでしょうね?」というレスポンスを受けて面食らったことがある。40歳前後の人だったと記憶しているが、多くの会社を渡り歩く中で少し立ち止まり、自分を見つめ直したり、振り返ったりする機会を持たなかったのだろうかと思う。別に、性格についてのセルフチェックを聞いて採否の材料にするわけではないが、自分という存在をどのようにとらえているのか、という点に関心がある。自分がない人は、どこに行っても嫌なことがあれば環境のせいにしてまた転職という流浪の旅を続けることになると思われるからだ。

偉そうなことを書いたが、10年・20年・30年前のわが身を振り返ったら、とても言えた義理ではないことは百も承知している。一採用担当者としての率直な思いを書かせていただいたことをご容赦いただきたい。

因みに私の長所は、①諦めないこと(10年かかってもやりとげること)、②(評論に終わらせずに)行動すること。
短所は①短気、②他人の気持ちへの配慮が足りないこと、
ではないかと思っている。

あなたのしようとすることを主にゆだねよ。そうすれば、あなたの計画はゆるがない。箴言16:3

(ここに記載した文章は全て筆者のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を固く禁じます。)