新「会社人間」主義ー貴方の側からの選択肢

今の学生に人気があるのはどのような企業であろうか。
1997年の男子大学生の人気企業ランキングは以下のようになっている。

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経営者や採用担当者の口癖として、「寄らば大樹、のような人間には来てほしくない」というものがある。しかし、自分達の若い頃はどうだったというのであろうか。
このような発言を額面通りに受け取る必要はない。最初の選択肢は、まずは「寄らば大樹」の観点から選べば良いのである。大樹は、優れた労働条件と安心できる未来のパッケージを意味するから、これを基準にするのは合理的な判断だ。ただし、気をつけなければならないことがある。

第一に、大樹がいつまでも大樹のままでいる保障はない、倒れるかもしれない。最近は、日産生命・山一證券北海道拓殖銀行を始めとして伝統ある企業が次々に市場から退場していった。今、良いとされている会社が10年後、20年後も繁栄するとは限らない。

第二に、「大樹に群がる」根性のエリートばかりが集まる会社は、それだけで未来が危ないということである。彼らは出来上がった階段を昇っていくつもりで入ってくるから、自分が会社をどう変えていくかということよりも、自分がどういう風に扱われるかということに神経を集中させている。「大企業病」の本質とはこういうことである。いつのまにか「自分がやらなくても誰かがやってくれるだろう」と思う者ばかりの集団になっている。絶対沈まない船に乗り込んだつもりになって与えられた役割すらやらなくなる・・・
あまりに組織が巨大化すると、経営というものの持つ「危うさ」についての想像力が、従業員から欠如してしまうのである。恰も、役所勤めをしているような気分になってしまうのである。

人気企業に行くなと言っているのではない。心構えをしっかり持てと言っているのである。

第三に、大きな企業に行けば暫くは歯車のように使われる。いくら私は優秀だと騒いでみても、何万人もの集団の中で最初にできることは限られる。自分という人材をどう売るかという観点で見た場合、企業の規模も重要な要素になってくる(一番良いのは、自分で会社を作って社長になることだ。全てのリスクを一人で負うことにはなるけれど)。
(新「会社人間」主義ー私の考える「ホワイトカラー」 1999年1月 より)

大学時代以来の親友で証券会社に勤める者が廃業の憂き目に会い、社員持株会でこつこつためてきた800万円が一瞬で紙切れになった。しかし、じっと耐えて、廃業会社の従業員を承継した外資の証券会社に勤め続け、今はDirectorになっている。能力ある者に忍耐力が重なると活路は拓けるという良い例だと思う(私にはとてもそこまでの我慢はできないだろうが)。

人気ランキング(Top10)の変化を確認するため、1965年と2018年大学卒業(予定)者のデータを拾ってみた。文科系に絞って業種別の推移を見ると、以下のようになる。

1965年:商社4、金融3、メーカー3
1997年:商社2、メーカー2、通信2、金融1、その他3(旅行2、広告1)

2018年:金融5、運輸2、旅行代理業2、商社1

各々の年代に出てくる社名は、変わり映えのしないものが多いが、業種別にみると明らかな変化があり、直近ではメーカーがゼロになり、金融がTop10の半分を占めている。1990年代初頭のバブル崩壊以降20数年にわたり低迷している日本経済(=GDPの停滞)の様相を直視した場合、「寄らば大樹」の大手金融ばかりに目が行ってしまうのはいかがなものかとも思う。

(ここに記載した文章は全て筆者のオリジナルであり、事前の承諾なき無断転載を固く禁じます。)
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